プチセリオシリーズ 第二話


「プチセリオ 出撃す」



 みなさ〜ん、お元気ですか? プチセリオで〜す。

 昨日は失敗しちゃいましたが、今日はちゃんと間違えずに東京有明はビックサイトに来ています。
 と、いっても研究所の方とセリオお姉さまに連れられてきたんですけどね。
 昨日はちゃんと来れたのに失礼しちゃいます。プンプン

 まあ、それはこちらに置いといて(置いとくんかい!>謎のツッコミ)、昨日はあれから大変だったんですよぉ〜。
 私が研究所に戻った途端、緊急メンテが行われました。
 もちろん私がどうして間違えちゃったか調べるためです。

 で、メンテして判ったのですが、実は私、内蔵カレンダーが一日ずれていたそうなんです。思わず笑っちゃいますよね。(お前が笑ってどうする!>謎のツッコミ)

 なんでずれていたかというとどうやら最初からずれていたみたいです。
 それでそれが何故今まで判らなかったかというと、これまで私、研究所にしかいなかったからなんですね。
 研究所では時間はそれなりに重要だったのですが、日付に関しては関係ない状況にありました。
 まあ、日々実験と研修を繰り返していましたから日付を気にする理由がありませんでしたし。

 それと私自身、電波時計から電波を受け取るのを忘れていたのも原因の一つでした。てへっ

 もっともその原因が判ったところで私はセリオお姉さまからお目玉をいただきました。シクシク
 そういったことが相まって今日はみなさんと一緒に来ることになってしまったんです。
 昨日は電車で来ましたけど、今日は車に乗って移動です。
 私も運転してみたいんですけどメイドロボットに車を運転させることは今のところ禁止されているのでできません。
 でも、それを緩和しようという動きはあるようです。

 ビックサイトに到着すると昨日ほどではありませんが、それでも行列が見えます。
 やはり最新のメイドロボットが一堂に会するということでそれだけみなさん、興味を持たれているようですね。

 今はメイドロボ戦国時代と呼ばれるくらい各メーカーが開発に鎬を削っていますからある意味当然といえば当然なんでしょう。
 今のところ業界トップは私を開発した来栖川エレクトロニクスです。
 やはり、HM−12とHM−13の出現は大きかったようですね。

 さて、私もこんなところで油を売っているとまたセリオお姉さまに怒られてしまいますので、お手伝いしなければいけません。

 来栖川のブースは他の所よりも広くなっています。
 そして私以外にもHM−12、HM−13が働いてますね。
 私もお手伝いすることにします。

「私は何をしたらよいのでしょうか?」

 近くで指示を出している長瀬パパに聞いてみました。

「ああ、プチセリオか。そうだねぇ、裏にいってセリオの手伝いをしていてくれるかな?」

 長瀬パパがセリオと呼ぶのはセリオお姉さまのことです。
 量産型セリオさんやマルチさんの場合はそれぞれに名前を付けられているのでその名前で呼ばれます。丁度今、私の前を通ったセリオさんは「千鶴」と呼ばれていますし、その後ろで看板を立てるのを手伝っているマルチさんは「楓」と呼ばれています。
 他にも「梓」、「初音」、「瑠璃子」、「瑞穂」、「沙織」がいらっしゃいます。

「はい、判りました。」

 私は元気良くそう答えるとブースの裏手に回りました。
 ここには色々な機材やお客様に配る資料やカタログなどがおかれています。
 あと、来栖川の人達が休んだり、私たちが待機するスペースでもあります。

 そこではセリオお姉さまが梓さんと瑠璃子さんに指示を出していました。

「梓さんは料理の実演を行って貰いますから、そこにあるエプロンを付けて準備してください。」
「瑠璃子さんはサテライトシステムの実演を担当しますから、システムに異常がないかチェックしてください。」

 お二方はセリオお姉さまの指示に従って準備を始めています。

「セリオ姉、料理はいいけど何を作るんだい?」

 梓さんがセリオお姉さまに尋ねました。
 梓さんの言葉がぞんざいなのはそのように設定されているからです。
 今日ここでお手伝いするHM−12、HM−13は普段、研究所で働いています。
 同じタイプが一緒の職場で働いていると誰が誰だか判らなくなるので名前の他にパーソナルデータを書き換えて個性がでるようにしています。これもその一つですね。

 本来これはやってはいけないことなのですが、研究の一環ということで研究所内においては認められています。最終的にはそれぞれのメイドロボが個性を持てるようにするためだと私は聞いています。

「電波、届いた?」

 瑠璃子さんがセリオお姉さまに尋ねました。

「はい届きましたが、瑠璃子さん、梓さん、ここは研究所ではありませんのでパーソナルデータは通常のものに変えておいて下さい。」

 セリオお姉さまがそうおっしゃっると、お二方は『判りました』と言いいました。

「それで梓さんの質問ですが、基本的には来栖川のデータベースにあるものを作っていただければ構いません。もし、お客様のご希望があり、それが作れるものであればそれを作ってあげてください。」
「とはいえ、あまり凝ったものは作れないでしょうからその辺の判断は梓さんに一任します。」

 その指示に梓さんは、

「了解しました。セリオお姉さま。」

 と、答えました。
 どうやらパーソナルデータを変えられたようですね。

「サテライトシステムのチェック、終了いたしました。異常は認められません。」

 瑠璃子さんがセリオお姉さまに報告します。

「それでは二人とも最終準備に入ってください。」

 その言葉にお二方は了解の返事をするとそれぞれの持ち場へ去って行かれました。

 私はそれを機にセリオお姉さまに尋ねました。

「セリオお姉さま、私は何をすればよいのでしょうか?」

 セリオお姉さまは私に顔を向けると、

「プチセリオさんはこちらにある衣装に着替えてください。」

 そうおっしゃいました。
 私は元気良くはいと答えると早速その衣装を身につけることにしました。

 なかなか可愛い衣装ですねぇ。あれっ?このステッキはなんでしょうか?
 衣装はピンクのワンピースでフリルが付いています。胸には衣装よりは濃いピンクで大きなリボンがあり、どうやら手首の部分にもリボンを付けるようですね。更に帽子も準備されていてそちらにも大きなリボンが付いています。

「着替えが終わったなら長瀬主任の所へ行ってください。」

 私が着替え終わると同時にセリオお姉さまが言いました。

「は〜い。」

 私がそう答えるとセリオお姉さまは、

「返事は短く答えるようにしてください。」

 そうおっしゃいました。私はもう一度、

「は〜い。」

 と答えるとその場を離れました。
 その後ろでセリオお姉さまのため息が聞こえたような気がしますけど、多分気のせいでしょう。

 私が表にでてくると長瀬パパは私に背を向けてどなたかに指示を出しているところでした。
 私は駆け寄るとその背中に飛びつきました。

「長瀬パパ〜!」

 次の瞬間その光景を見ていた方達の動きが止まりました。
 動いているのはメイドロボだけです。
「お、おい、長瀬主任ってああいう趣味が…。」
「それにしてもアレも長瀬主任の好みなのか?」
 とか話しているのが聞こえます。

 長瀬パパは私を背中にぶら下げたまま、苦笑混じりに言いました。

「プチセリオ。パパと呼ぶのはやめなさいといつも言っているでしょう。」

 あっ、いけません。つい長瀬パパといってしまいました。てへっ
 そして私の方に首を回すと長瀬パパは固まってしまいました。
 あれ?一体どうしたのでしょうか?

 私が長瀬パパから離れるとパパは私の方を向いて言いました。

「ぷちせりお!それは一体どういうことなんだい?」

 いつもおっとりしていてメイドロボット並に感情を表さないパパが何故か今、焦っています。
 私はセリオお姉さまの指示に従っただけですけど、と答えました。

「セ、セリオが?」

 私が肯定の返事をするとパパはすぐさまセリオお姉さまを呼びました。
 その声を聞いてセリオお姉さまが裏からでてきました。

「セ、セリオ。」
「なんでしょうか?長瀬主任。」
「プチセリオにこの衣装を着ろと指示したのはお前かい?」
「はい、長瀬主任の指示だからといわれまして。」

 その答えを聞くとパパはいつもの口調に戻り言いました。

「そう言ったのは誰だい?」
「はい、開発七課の○○さんです。」

 セリオお姉さまがそう答えると長瀬パパはがくりとうなだれました。
 丁度その時綾香お嬢様がやってこられました。

「は〜い、セリオ、長瀬さん、準備はどう?」

 そして私の姿を見ると、

「あら、プチセリオはまたずいぶん可愛い格好をしているわねぇ。」

 そう言って褒めてくれました。
 褒めていただけるのはやっぱり嬉しいですね。

「でも、これって何処かで見たような気がするんだけど…。」

 するとセリオお姉さまがおっしゃいました。

「綾香お嬢様、これはカードマスターピーチの格好です。」

 さすがセリオお姉さまです。
 既に知っておられたようですね。

「長瀬さん、ずいぶんといい趣味してるわねぇ〜。」

 綾香お嬢様はそう言って長瀬パパに視線を向けました。
 目が細められていてなんだか怒っていられるような感じです。

「い、いえ、これには訳がありまして…。」

 長瀬パパはその視線にあたふたしながら答えました。
 これもまた珍しいことですね。

「では、その訳というの是非とも聞きたいわね。」

 そう言って綾香お嬢様はパパの方へ向かって歩いていきます。
 その後ろ姿には何か判りませんが、感じるものがありました。

「綾香お嬢様、長瀬主任はこのことを今知ったばかりです。」

 セリオお姉さまが綾香お嬢様に声を掛けます。
 その言葉に綾香お嬢様の動きが止まりました。
 そして首だけセリオお姉さまの方に向けると、

「どういう事かしら?セリオ。」

 そうおっしゃいました。
 それまで私が綾香お嬢様に感じていた何かが一瞬緩んだような気がします。

「はい、私も長瀬主任はこのことをご存じありませんでした。むしろこの姿に一番驚かれたのは長瀬主任です。」

 セリオお姉さまはこれまでの経緯を綾香お嬢様に説明しました。

「なるほどね。そうすると今回の首謀者は○○さんということなのね。」

 綾香お嬢様はどうやら納得されたようでしきりにうなずいています。
 そして長瀬パパに向かうと、

「長瀬さん、話は分かったけどどうするつもり?」

 長瀬パパは額をハンカチで拭きながら答えました。

「まあ、この格好のままにしておくのはやはりまずいでしょうな。」

 その時、綾香お嬢様の方を叩く方がいらっしゃいました。
 綾香お嬢様が振り向くとそこには芹香お嬢様が立っていらっしゃいました。

その格好のままでよいと思います。
「えっ、その格好のままでいいって、姉さんいきなり何を…。」
可愛いのは好きです。
「『可愛いのは好きです』って言われても…。」
すごく可愛いから…。
「わ、判ったわよ、だからそんな目で見ないで。」

 綾香お嬢様は長瀬パパに向き直ると、

「姉さんがこのままで良いといっているからこのままでいいわ。」

 そうおっしゃいました。

「しかし、綾香お嬢様。」

 長瀬パパは何か言いたげです。

「しょうがないじゃない、姉さんが気にいっちゃったんだから。」

 そう言ってため息を付きました。
 芹香お嬢様はその様子を見るとにっこり笑い(といっても普通の人にはほとんど判らなかっただろうけど)私の方にやってこられました。
 そして『可愛いです』とおっしゃられると私を抱きしめられました。

 私はいきなりの事で驚いてしまいました。
 芹香お嬢様は更に私の頭を撫でてくれました。

 あっ、何となく気持ちいいです。
 だんだんと心安らぐ気持ちでいっぱいになってきました。

 私は今、幸せです。


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あとがき
 プチセリオシリーズ第二弾をお届けします。
 やっぱり、これは書きやすいわ。(^^;)
 とはいえ、やっぱり一回じゃ終わりませんでした。(爆)
 本当は一話完結にするつもりだったんですが、ロボットショー自体がまだ始まっていません。
 と、言うわけでロボットショー編は次回も続きます。
 なんか今回はほのぼのしてしまいましたねぇ。

 ちなみに今回でてきたメイドロボットの名前は深い意味はありません。ふと名前を考えたとき浮かんだだけです。
 しかし、SSを書いていて楽しいのはこうやってふと浮かんだことから話が膨らんでいくと言うことでしょうね。
 少なくともロボットショーの次には研究所での話を書こうかと思ってしまいましたから。
 これらのメイドロボとプチセリオの交流をそのうち書きたいと思ってます。
 でも、次回はこの続きですね。
 一応、次回でロボットショー編は終わりにする予定ですけど、実際書いてみないとどうなるかは分かりません。(爆)

 まあ、次も楽しみにしていてください。


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