「おーい、マルチィ〜!」
俺は前を歩いていたマルチに声をかける。
そしてその声に気付いたマルチは振り返り、俺を確認すると、
「あっ、浩之さん」
そう言って笑顔のまま俺のところまで走り寄ってきてくれた。
でも、いまは…。
マルチの心 −第二十一話−
「お帰りなさいませ、浩之さん、あかりさん。」
そういってマルチは浩之たちに頭を下げた。
「マルチちゃん、買い物に行ってきたの?」
横からあかりがマルチに声をかける。
「はい、夕食のおかずを買いに行きました。」
そして浩之が持っている荷物に気付いたマルチは、
「それよりも浩之さん。その荷物をお持ちしましょう。」
と、言って荷物を受け取ろうとした。
「いや、その必要はないぞ。そんなに重いものじゃないしな。」
「反対に俺がマルチの荷物を持っていってやるよ。」
浩之は以前のマルチに話しかけるようにそう言うとマルチの買い物かごを取ろうとした。
「それはいけません。」
マルチは買い物かごを隠すように後ろへ回した。
「何で、いいじゃないか。」
「いえ、人間の方にそんなことをさせるわけには行きません。」
「それに既に浩之さんは荷物をお持ちです。」
「私が浩之さんの荷物を持つのならともかく、私の荷物を持っていただいくことはできません。」
その態度に浩之も無理だと感じたのだろう。
「分かった。じゃあ、それぞれがそれぞれの荷物を持つということにしよう。」
「それならば問題ないだろう。」
そう言って浩之は折れた。マルチはそれでも納得いかないようではあったが、これ以上は無理だと
感じたのか、なにも言わなかった。
浩之はこのやりとりでふと昔を思い出していた。
あのマルチも俺が手伝おうとすると申し訳ないと言っていたよなぁ、と。
これがあのマルチの心とは浩之も思っていない。
ただ、メイドロボはそういう点は皆同じなんだと思うのみであった。
「では、これで失礼いたします。」
マルチは一礼するとその場を離れようとした。
「マルチ、ちょっと待て。」
その態度に浩之は待ったをかける。
「何でしょうか?浩之さん。」
再び浩之たちに向き直るとマルチは訊ねた。
「折角、ここで出会ったんだ。一緒に帰ろうぜ。」
「そうよ、一緒に帰りましょ。」
浩之とあかりの提案をマルチは固辞した。
浩之はマルチにその理由を尋ねる。
マルチが言うには予定した時間よりも遅れていたこと、本来だったら既に戻って出迎えの準備をしていなくては
いけないのに浩之たちにあってしまい申し訳なく思っていることを伝えた。
浩之はそんなことは気にすることはないから一緒に帰ろうと言うのだが、それでもマルチは固辞し続けていた。
浩之はやれやれと思いつつマルチに言葉をかける。
「なあ、マルチ。ここでこんな事していても予定が遅れるだけじゃないか?」
その言葉にマルチはハッとする。マルチの表情は変わらなかったが、そういった雰囲気を浩之は感じた。
「話ながらでも帰れるんだし、既に出迎えは済ませたようなものなんだから一緒に帰ろうぜ。」
浩之にそう言われてマルチも諦めたのか『はい』と一言答えると浩之たちと共に帰宅の道へとついた。
歩きながら浩之はマルチに今日は何をやっていたのか質問する。
それに対し、マルチは事務的に受け答えした。
そのやりとりを聞いていたあかりはどうしても二人の間に入ることができなかった。
別に遠慮していたわけではない、話に入るきっかけが掴めなかっただけであった。
とはいえ、浩之とマルチの会話も弾んだものではなく、何となく重苦しい雰囲気が3人を包んでいた。
ただ、マルチ自身はそれを何とも思っていないようであったが。
いや、気付いているのかどうかも浩之とあかりには判断できなかった。
しばらく歩いていくと浩之の自宅が見えてきた。
マルチは浩之たちよりも歩調を速め、先に門を入る。そして玄関の鍵を開けると浩之とあかりに声をかけた。
「どうぞ、お入りください。」
そう言うとドアの脇に避け、浩之とあかりを先に上がらせる。
二人が中にはいると自分も中に入り、再び二人の前へ移動する。
「食事の準備はこれからですのでしばらく時間がかかります。」
「それまで何か飲まれますか?」
マルチは二人に尋ねた。
「ああ、コーヒーでもいれて貰おうか。」
「分かりました。」
「あかりさんもコーヒーでよろしいでしょうか?」
マルチの問いにあかりもそれで良いと言った。
「では、準備してきます。」
買い物かごを持ってマルチは台所へ向かった。
そして二人はそのまま居間へ向かった。
あとがき
このところうまく書けません。(/_;)
やはり才能のなさを痛感しています。
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