「なあ、あかり?」
「うん、なに?」
「お前さあ…」
「うん」
「もし、誰かと結婚して…」
「え!? だ、誰かって…!?」
「まあ、誰でもいい。とにかく、結婚してだな…」
「う、うん…」
「…家庭の主婦になったとしたら、やっぱメイドロボ、いたほうがいいか?」
「メイドロボット?」
あの時浩之ちゃんにこう聞かれたけど、どうしてだったんだろう?
マルチちゃんのことを浩之ちゃんは好きだったんだろうか?
マルチの心 −第二話−
大学へ向かう二人の間に会話はほとんどなかった。
いつもならそれなりの会話があるが普通であったのだが…。
あかりが浩之を横目でみるとなにやら難しい顔して何か考えているようだった。
あかりにしてみれば何を悩んでいるのか知りたかったが、自分から話そうとしない限り浩之はなにも話してくれないことを
知っていたし、そしてそれを無視して訊けるほどあかりは図々しくなかった。
それゆえ、ここは何も言わずに黙っていることにした。
多分、話す気になれば話してくれるということを今までの経験から分かっていたから。
「ねえ、浩之ちゃん。」
何度か声をかけて考え事をしている浩之をこちらに呼び戻す。
「なんだ、あかり?」
「今日ねぇ、お弁当を作ってきたんだ。あとで一緒に食べようね。」
そういって微笑むあかり。
「ああ。」
それでも浩之は生返事をするだけであった。
昼休み、キャンパスの中庭で浩之とあかりが芝生に座って食事をしている。
穏やかな日差しの中で食べる食事はあかりの心をのびのびとさせていた。
しかしながら、浩之に目を向けると相変わらず不機嫌な様子であかりの作った弁当を食べている。
いや、不機嫌というのは間違いだろう元々目つきがキツイせいもあって不機嫌に見えやすいのだ。もっとも今は考え事を
しているからよりそう見えるだけであった。
あかりにしてみてもこれだけ悩んでいる浩之をみるのは初めてであった。
それだけにどうして良いのか判らずにいる。そのせいもあって会話も弾まなかった。
重苦しい沈黙の中、なんとか雰囲気を変えようかと浩之に声をかけた。
「そういえば浩之ちゃん、マルチちゃんは届いたの?」
しばらく前、浩之があかりにそういっていたことを思い出したのだ。
その言葉を聞いてあかりに顔を向けつつぽつりと、
「ああ。」
と答えるだけであった。
「どうなの?マルチちゃんは。前と変わりないの?」
あかりにしてみれば何気ない一言だったのだろうが、その一言は浩之にとってつらい一言だった。
浩之はすっと立ち上がると、
「わりぃ、今はそういう気分じゃないんだ。」
「弁当、御馳走さん。」
そういってあかりのもとから逃げるように歩いていった。
「浩之ちゃん…。」
「本当に一体何があったんだろう?」
ただ一人残されたあかりは呆然と遠ざかっていく浩之を見つめるだけであった。
あとがき
なんとかあかりが登場するところまで進みました。
でも、マルチはまったく出てませんね。(^^;)
私としても早く登場させたいのですが、今しばらく浩之の葛藤が続きます。
多分、四話か五話にならないと起動することはないでしょう。
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