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 人間にとって食べるということは楽しみの一つだという。

 でも、私にはそれを理解することは絶対にないだろう。

 なぜなら、私は物を食べる必要はないのだから…。


 マルチの心 -第十六話-


「実は俺、メイドロボを買ったんだよ。」
 浩之は綾香にそういった。
 そして綾香はそれを聞いてピンときた。

「なるほどね。だからそういったわけか。」
「えっ、どういうことなの?」
 あかりにはさっぱり分からないようで二人に訊ねた。
 それに対し綾香が答える。

「ええとね、私が作った今日のお弁当って浩之が言うように教えてくれた人…、いや、ロボットがいるのよ。」

 そういって綾香は話し出す。
 綾香が今日作ってきた弁当は実はセリオに教わって作ったものだった。
 来栖川家における芹香と綾香の姉妹にとって料理を作るというのは学校の調理実習以外ではほとんど行ってない。
 それは一般庶民と違って自ら作る必要はないと来栖川家当主が考えているせいであった。
 確かに高校時代の芹香のお弁当は自宅の料理人が作ったものであり、芹香自身が料理をするというのはオカルト絡みの
薬品を作ること以外なかった。もっともこれを料理といえるかどうかは疑問であるが。

 そして来栖川家の料理人は綾香たちに料理を教えてくれるような人ではなかった。
 別に意地悪でということではない、そういうことをすると自分たちが怒られてしまうからであった。
 綾香たちの両親は料理ぐらいは良いだろうと考えていたが祖父は昔ながらの人だったこともあり、庶民が行うようなことに
関しては無理解な面が多分にあった。
 そして来栖川家の実権は未だに祖父にあるため使用人たちはどうしても祖父の顔色を窺わないわけには行かなかった。

 そこで綾香はメイドロボのセリオに頼ったのであった。
 セリオはマルチの姉妹機に当たり、同時開発されたものだった。
 形式はHM-13、しかしながら綾香のところにいるセリオはHMX-13、つまり試作型のセリオであった。

 セリオは「より高機能に」を売りにしており、実際マルチタイプよりも販売価格は高くなっていた。
 そして一番の特徴は衛星を使ったサテライトシステムであった。
 この機能によりセリオは必要データをダウンロードすることでたちまちのうちにその道のプロフェッショナルになることが可能となる。
 それに対し、マルチタイプはサテライトシステムを使うことはできないため基本的なものを全部搭載するようにしてあった。
 その他に必要な場合はDVD-ROMまたは電話回線を使ってデータのダウンロードを行うようになっていた。
 特にマルチタイプは家庭での使用を基準に作られているため、家事に関するデータを中心にインストールされている。

 つまり、セリオもマルチも基本的に同じデータを使って料理をするため、同じ材料を使った場合同じ味になるのは当然といえば
当然のことであった。

「と、いう訳なのよ。分かった?」

 綾香の種明かしを聞いてあかりは納得した。

「ところで浩之。と、いうことはうちの製品を買ったのね。」
 当然の帰結として綾香は浩之に訊ねる。

「ああ、マルチタイプをな。」
「ふ~ん、そうなんだぁ~。」
「確かに一般家庭だったらマルチタイプで十分だと私も思うわ。」
「まあ、そうだな。」

 本当はそれだけが理由でないことをあかりは知っている。
 しかし、それは彼女がいうべき事ではない。
 そして浩之もそれ以上は話すつもりがないようだった。

「で、どう? うちのメイドロボのできは?」
 綾香は興味津々に聞いてくる。

「どうといわれてもなぁ。起動させたのは昨日だからまだ良く判んないよ。」
「ただ、今朝はありがたかったけどな。」
「どういうこと?」
「ああ、起こしてくれたし、起きたら朝飯ができていたのにはちょっと感動したぞ。」
「なるほど、そういうことね。」

 それを聞いて綾香はやや呆れながらも納得したようだった。

「ねえ、浩之ちゃん、マルチちゃんはどんなお料理を作ったの?」

 しかし、あかりにとってはマルチが朝食を作ったことに内心穏やかでないものが沸き上がってしまったようだ。

「ん、目玉焼きにサラダだろ、あとは焼き海苔とご飯に味噌汁だった。」
「特に凝ったおかずはなかったな。そういう意味ではお前が作ってくれる物の方が凝っていると思うぞ。」

 さらりとフォローを忘れない浩之であった。

「あらあら、ごちそうさま。」

 綾香はそういって二人を見比べる。
 その言葉に顔を赤くする二人であった。

「さて、食事もすんだし、そろそろ昼休みも終わるわね。」
「あっ、そうだね。じゃあ、そろそろ片付けないと。」
「いいわよ、私が片付けるから。」
「そうはいかないよ。昨日来栖川さんだって同じ事をしたじゃない。」

 そういわれるとそれ以上強く言えない綾香であった。

「じゃあ、二人で片付けましょう。」

 そういって片付けをはじめる二人。
 浩之はその二人の様子を見ながら今、マルチはどうしているかな?と思った。


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あとがき
 今回はちょっと短くなりました。(^^;)
 今週末から旅行へ出かける予定なので次の更新は来週になりそうです。


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